2021.11.12
コンパクトシティ、という言葉を耳にしたことはありますか?コンパクトシティとは、一般的に、
1)高密度で近接した開発形態、
2)公共交通機関でつながった市街地、
3)地域のサービスや職場までの移動の容易さ、
という特徴を有した都市構造のことを示します。コンパクトシティはしばしば「人口減少」の文脈で取り上げられます。
では、なぜコンパクトシティは人口減少社会において必要なのでしょうか?
ここで鍵になるのは、人口は減っているなかでの土地の利用はどのようになっているのかということです。このような疑問においての着目すべき指標は、
人口集中地区(DID: Densely Inhabited Districts) です。人口集中地区とは、都市的地域(特に人口密度の高い地域で、広い意味での市街地を指す。)
の特質を明らかにする新しい統計上の地域単位として、昭和35年国勢調査から設定されました。この人口集中地区は、統計データに基づいて一定の基準により設定され、
平成12年国勢調査では、国勢調査基本単位区等を基礎単位として、
1.「原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接」して、
2.「それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有する地域」とされました(埼玉県資料による)。
国土交通省の2015年版「国土交通白書」に掲載されている「図表2-2-2 県庁所在市における人口及び県庁所在地のDID面積の動向」によると、 1都市あたりの平均DID面積(㎢)は増加しているのにもかかわらず、1都市あたりのDID人口はほぼ横ばいです。つまり、環境省の2015年版「環境白書・循環型社会白書・ 生物多様性白書」に掲載されている「図1-1-3 DID人口密度の推移」のようにDID人口密度は低下していることが指摘できます。つまり、現実には人口密度が低水準な都市的地域の 面積は拡大しており、「コンパクト」な都市とは逆行しているのです。
このように人口は減少しているのに、都市的地域が広がるとどのような問題が発生すると考えられるでしょうか。住民は少なくなるにもかかわらず、 より広い地域で、道路や上下水道などのインフラを提供しなければなりません。病院にいけない、役所に行けないといった困難が発生しないよう郊外にも拠点を設けるとなると、 地方の財政の負担となります。結果としてこれらのサービスが不十分になる可能性があります。また、人口減少による経済活動の減退から、空き家や平置き駐車場といった 低未利用地が増えることも想定されます
こうした背景からコンパクトシティの形成は重要な施策として取り上げられます。ただし、コンパクトシティを実現することは決して簡単なことではありませんし、 それだけを達成して万事解決とはなりません。人口減少や高齢化が進む都市において、より効率的で持続可能な生活を築くためにはどのような施策が必要なのか、 真剣な検討が必要であると言えるでしょう。
白書・審議会名 環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」
掲載年度 2015年
掲載図表のURL
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h27/img/fb1_1_1_03.gif
出典元 / 統計名 総務省 / 平成22年国勢調査
図表データ対象年 1960年 ~ 2010年
バックデータURL なし
白書・審議会名 国土交通省「国土交通白書」
掲載年度 2015年
掲載図表のURL
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/image/n10202020.gif
出典元 / 統計名 総務省 / 国勢調査
図表データ対象年 1970年 ~ 2010年
バックデータURL
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/excel/n10202020.xls
埼玉県「人口集中地区(DID)とは何ですか?」 (https://www.pref.saitama.lg.jp/a0206/toukeifaq/q3-1.html, 最終閲覧日2021年10月30日)
国土交通省「平成26年版 国土交通白書」 (https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/html/n1213000.html, 最終閲覧日2021年10月30日)