03. 認知症を知ろう!

コーエンズ英理(東北大学法学研究科 公共政策大学院 修士課程)

2021.06.30

認知症という病名を耳にしたことはありますか。認知症とは、記憶障害、見当識障害、判断力の低下(中核症状)を引き起こす脳の認知機能障害を指し、 この障害が日常生活に支障をきたすようになると認知症と呼ばれます。内閣府の2017年版「高齢社会白書」に掲載されている「図1-2-3-2 65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率」 によると、各年齢層の認知症有病率が2012年以降も一定であると仮定した場合、2025年には18.5%が、2060年には24.5%と増加すると推定されています。 また、有病率が2012年の水準よりも上がった場合、2025年には22.5%、2060年には33.3%まで上昇することが予測されています。これらの分析から認知症を患う人は将来的に増えていくこと が確実視されていることがわかります。

認知症を患う人が増えることに伴って、認知症を起因とするトラブルや事件も増えることが推察されます。一例として、外に出て自宅に戻れなくなるケースが、 現時点において増加傾向であることが挙げられます。警察庁の2019年版「警察白書」に掲載されている「図表2-84 認知症に係る行方不明者届の受理件数の推移(平成26~30年)」 によると2018年時点で、認知症の行方不明者は16,927人に上っていることがわかります。加えて、行方不明になって発見されたとしても、名前・住所等を言えないことで身元不明のまま 介護施設で暮らすということもあります。

認知症の方がより生活しやすく、介護する家族・介護者がより安心して暮らせるために現在どのような政策がとられているのでしょうか。厚生労働省は認知症施策総合戦略の7本の柱の一つの 「認知症の人を含む高齢者に優しい地域づくりの推進」にて、自治体ごとの高齢者の見守り・SOSネットワークの構築を推し進めています。また、自治体によっては住民・警察・自治体・企業 といった包括的なネットワーク構築に加えて、GPSといった探知システムを希望者へ無償で貸与をすることで、行方不明者発見の効率化・迅速化を図っています。

このように現在においても認知症に対しての政策立案は行われています。これからも、認知症の人がただ単に支えられる側になるのではなく、より充実した生活をおくることができる、 そして介護をする家族・介護者が孤立しないような社会構築を推し進めていくことが求められるでしょう。

使用した図表・バックデータ

1.

白書・審議会名 内閣府「高齢社会白書」 掲載年度 2017年
掲載図表のURL
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/img/z1_2_3_02.gif
出典元 / 統計名
平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 / 日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(九州大学 二宮利治)
図表データ対象年 2012年 ~ 2017年
バックデータURL
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/csv/z1_2_3_02.csv

2.

白書・審議会名 警察庁「警察白書」 掲載年度 2019年
掲載図表のURL
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/image/v2z02840.png
出典元 / 統計名  なし
図表データ対象年 2014年 ~ 2018年
バックデータURL なし

3.

厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト──認知症」 (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-036.html, 最終閲覧日2021年6月27日)

4.

厚生労働省老健局 第4回認知症高齢者に優しい地域づくりに係る関連省庁連絡会議「資料2-4 地域における認知症の人の見守り体制の構築について」(2016年5月31日) (https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/04_shiryou2-4_1.pdf, 最終閲覧日2021年6月29日)

5.

高崎市「はいかい高齢者救援システム(GPS)」 (https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/04_shiryou2-4_1.pdf, 最終閲覧日2021年6月29日)