01. 育休をとるのは女性だけ?

コーエンズ英理(東北大学法学研究科 公共政策大学院 修士課程)

2021.05.31

子育ては女性の役割という認識は変わってきてはいるものの、まだ根強く残っています。国土交通省の2018年版「国土交通白書」に掲載されている 「図表1-1-11 女性の年齢階級別労働力率の推移」を見てみましょう。結婚出産にあたる25歳あたりから労働力率が一旦下落し、育児が落ち着いた35歳以降回復するという グラフを描いています。これは、いわゆるM字カーブと言われる現象です。M字の谷は近年浅くなってきていることがこの図表からもわかりますが、女性活躍推進が声高に叫ばれている中、 結婚出産に関係なく女性が継続的に仕事を続けられるように支援することは不可決といえるでしょう。

女性が子育てを理由に仕事を離れなくても良いようにするにはどうすればいいのでしょうか。この問いに対して、様々な回答が考えられると思いますが、 一番に男性の育児への参加が言えるでしょう。では、実際、男性はどのくらい育児に参加しているのか、今回は育児休暇に注目してみてみたいと思います。

2020年11月26日に行われた第135回社会保障審議会医療保険部会の資料に掲載されている「男女別育児休業取得率の推移」によると、 令和元年度において女性の育児休業取得率は83%であるのに対して、男性は7.48%に留まります。上昇傾向にあることが指摘できる一方で、今なお低水準であることが特徴です。 また、同じく第135回社会保障審議会医療保険部会の資料に掲載されている「育休の取得期間別割合」によると1ヶ月未満の短期間の育児休暇の取得率が女性では0.9%となっている一方で、 男性は81%という結果になっています。これらの数値から、育児休暇の取得率がそもそも低い現状と、取得したとしても短期間の取得が多くを占める状況が読み取れます。

2021年2月26日に、従業員が1000人を超える大企業に育児休業等取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率の公表を義務付ける改正育児・介護休業法が閣議決定されました。 これにより男性の育児休暇の取得が推進されることが期待されます。

しかしながら、男性が育児休暇を取れば女性が子育てを理由に離職することなく、継続的に仕事をできるかというとそう一筋縄にはいきません。 例えば、男性が育児休暇を取得していたとしても、1ヶ月未満で終わり、結局女性の長期間の取得をとる状況が変わっていなければ、女性が長期的に仕事から離れる現在の構造と変わりません。 男性の育休取得率の向上のみならず、取得期間の長期化が今後の課題となるでしょう。

使用した図表・バックデータ

1.

白書・審議会名 国土交通省「国土交通白書」 掲載年度 2018年
掲載図表のURL
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h29/hakusho/h30/image/n10101110.gif
出典元 / 統計名
総務局 / 労働力調査(基本集計), 内閣府 / 平成29年版男女共同参画白書
図表データ対象年 1976年 ~ 2016年
バックデータURL なし

2.

白書・審議会名 社会保障審議会 掲載年度 2020年11月26日
掲載図表のURL
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000698355.pdf
出典元 / 統計名
厚生労働省 / 雇用均等基本調査
図表データ対象年 なし
バックデータURL なし

3.

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案要綱 (育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正関係https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000728868.pdf