2021.04.30
生育環境を選べない子どもにとって、自分を守ってくれるはずの存在である大人から虐待を受けるというのは大変つらいことです。 当事者だけでは解決できない場合、事態が手遅れになる前に、行政や司法が介入することは、子どもたちにとっても、 虐待の当事者にとっても不可欠なことといえるでしょう。
では、実際、子どもを虐待しているのはどのような関係者なのでしょうか?内閣府の2019年版「子ども若者白書」に掲載されている 「第3-40図 児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数」を見てみましょう。「児童相談所における相談対応件数」とは、 児童相談所が警察・近隣知人・学校等から相談を受け、援助方針会議の結果により指導や措置等を行った件数を指します。
まず、相談対応件数は年々増加しています。2020年11月19日の厚生労働省発表「令和元年度児童虐待相談対応件数」によると、 2019年度の対応件数は、193,780件(前年度比21.2%増)となり、1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新しています。 前年度からの増加数も過去最多となっています。
次に、主たる虐待者の構成をみると、実母の割合が46.9%と最も高いものの、実父の割合も年々増加し40.7%となっていることが特徴です。 また、実父以外の父親が6.1%、実母以外の母親が0.6%となっています。
一方、法務省2019年版「犯罪白書」に掲載されている「4-6-1-2表 児童虐待に係る事件 検挙人員(被害者と加害者の関係別,罪名別)」 では、児童虐待が犯罪として検挙された件数と、被害者と加害者の関係を見ています。これは、児童虐待防止法2条の規定する児童虐待により 犯罪として検挙された事件を示しています。2018年度の段階で検挙人員は1419件、2003年度の5.9倍となっています。
また、加害者の43.8%(622件)が実父、実父以外の父親(養父・継父・母親の内縁の夫)が27.7%(393件)を占めています。実母は24.8% (352件)となり、父親等による加害の割合が7割以上を占めていることが分かります。また、父親等による性犯罪(強制性交・強制わいせつ) が検挙件数の12.8%(181件)を占めるなど、深刻度の高い犯罪において、男性が加害者になっている状況が読み取れます。
児童相談所の相談対応件数は、令和2年度の速報値でも197,830件と過去最高を更新しています。(「児童虐待相談対応件数の動向について (令和2年1月~令和2年12月分速報値)」より)。大変痛ましいことですが、そもそも親子間の心理的虐待など、 第三者には認知されにくい事案であった児童虐待が、児童相談所の対応案件となること自体は、 密室化してしまう場合に比べれば望ましいとも言えます。
しかし、犯罪白書から浮かび上がる父親等による加害の割合の多さを踏まえると、児童相談所の対応でもなお見えにくい事象があるように推察できます。 児童相談所と警察の連携や、それぞれの機関の体制の強化も今後の課題となるでしょう。
白書・審議会名 法務省「犯罪白書」
掲載年度 2019年
掲載図表のURL
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/images/full/h4-6-1-02.jpg
出典元 / 統計名
警察庁生活安全局 / 記載なし
図表データ対象年 2003年 ~ 2018年
バックデータURL
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/excel/4-6-1-02.xlsx
白書・審議会名 内閣府「子ども若者白書」
掲載年度 2019年
掲載図表のURL
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/img/z3_40.gif
出典元 / 統計名
厚生労働省 / 福祉行政報告例
図表データ対象年 1999年 ~ 2017年
バックデータURL
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/csv/z3_40.csv
https://www.mhlw.go.jp/content/000696156.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000769810.pdf